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見落としがちな
乳幼児の鉄欠乏性貧血

和紙ちぎり絵Ⓒ森住ゆき 画像の転載禁

乳幼児の鉄欠乏性貧血は、日常診療をするうえでよく遭遇するにもかかわらず、見落としがちな疾患の一つである。

1歳前後まで母乳栄養を行っていた児に多い

国によって発生頻度は異なるが、日本の平均的な例として沖縄県の調査では、貧血の頻度は4~5か月児では栄養法によって差はみられないものの、9~10か月児では母乳栄養児の33%、混合栄養児の10%、人工栄養児の18%にみられ、母乳栄養児で最も高い。特に母乳分泌が少なくなっても、乳児が人工乳を嫌がったために、1歳前後まで母乳を中心とした食事内容で育てられたケースに多い。

離乳後期以降は赤身の魚肉、レバーの多用を

母乳で育児することは最も大切なことであるが、生後7、8 か月頃から体内の貯蔵鉄は減少しはじめ、生後9か月頃には鉄欠乏が生じる可能性がある。その起因として、生後9か月頃からは離乳食も1 日3回となり離乳食の量が増え、それに伴い乳汁の量は減少するようになる。しかし、この時期はまだ鉄の多い離乳食をそれほどたくさん食べることができず、乳汁には鉄は含まれているが、乳汁が減少するとそこに含まれている鉄も減少することになり、そのため、赤ちゃんの体内では鉄が不足しやすい状態になるからである。特に離乳後期(生後9~11ヶ月)以降は鉄分が不足しやすいので、離乳食に鉄分豊富な赤身の魚や肉、レバーなどを多用しないと鉄欠乏性貧血に陥りやすい。

未熟児出生、出生時の輸血歴等で多くは疑われる

乳幼児の貧血はゆっくりと進行し症状が明確でない為、親のみならず小児科医でさえ日常診療上、見落とすことが多い。顔色不良、食欲がない、生気がないなどで気づくことはむしろ少なく、未熟児出生や子宮内発育不全症などによる貯蔵鉄の不足、妊娠中の母体重度貧血、出生時に消化管出血、胎盤早期剥離や臍帯早期結紮などの血液ロス、さらに輸血された血液がより早期に代謝される(通常の赤血球の寿命は120日)、あるいはその後の急速な発育によって貯蔵鉄が消費されてしまう場合、あるいは前述の1歳まで母乳栄養のみを行っていたなどによる鉄摂取の不足などのリスクを認識することで、初めて鉄欠乏性貧血を疑い始めることが多い。また、診察室で使用する蛍光灯の色によっても、患児の顔色を判別しにくいことがあるため、白色灯を使うと分かりやすい。

診断基準や生後の発育に伴う赤血球変動を念頭に

一方、たとえ血液検査をしても、診断基準や生後の発育に伴う赤血球の変動が念頭にないために、診断や治療に結びつかないことがある。新生児のヘモグロビン(Hb)は高値であるが、成長とともに値は減少し、1歳前後で数値が最も小さく(Hb11.0g/dL)なり、その後再び増加する(Wintrobe法)。

Hb10.5g/dL以下が3か月以上継続すると精神・運動発達の阻害が

1995年に厚生労働省によって発表された『離乳の基本』においてすでに、鉄欠乏と乳児の精神運動発達遅延の関連が明記されており、赤ちゃんの鉄欠乏はそれが貧血にならない程度のものでも、神経伝達物質の生成が阻害されて、脳細胞の機能低下がもたらされ、鉄欠乏が3か月以上続くと、精神運動発達遅滞にいたる可能性があることが明らかになった。Hb濃度10.5g/dL以下が3ヶ月以上続くと精神および運動発達が阻害されることも念頭に入れるべきである。そのため、乳幼児の鉄欠乏性貧血のカットオフ値をHb<11.0g/dL、ヘマトクリット(Hct)<32%、平均赤血球容積(MCV)<70fLと設定しているのは重要な意味をもつ。

感染症罹患時のフェリチンは参考程度に

鉄欠乏症の早期診断の指標となるフェリチンはacute phase reactant(APR)でもあるため、上記のパラメータも含め感染症罹患時は検査値が変動するので参考程度にとどめる。

赤血球の形状異常は常に注目すべき

鉄欠乏性貧血

(エバラこどもクリニックにおける血液検査データより解析)

しかし、赤血球の形態異常(大小不動、環状、奇形など)がみられるときは、高率に重症の鉄欠乏性貧血が見つかる場合がある(①)ので、日常よく検査する血算(CBC)のデータ読み取りにおいては、赤血球の形態異常については常に注目しなければならない。たとえ、形態異常が1+(顕微鏡視野200倍にて10個以下)であっても、さらに詳細な鉄欠乏性貧血の病歴の聞き取りや詳細な血液検査を実施すれば、重症の鉄欠乏性貧血を見つけることが可能である。

調理方法を工夫して乳幼児にレバーを

離乳食に含まれる鉄分は不足がちだが、鉄分を多く含み、さらに長からの吸収もよいレバー、牛肉、鶏肉、赤身のさかなといった食品を多く使うとよい。特に、鉄の吸収をよくするビタミンCを多く含む果物や野菜を同時に接種すると、アルカリ化している十二指腸において、食品に含まれている三価鉄を吸収しやすい二価鉄に変換してより鉄が吸収しやすくなるので、お肉を食べる時に、ビタミンC豊富な野菜や果物を同時に摂取することを心がけることが大切である。若い母親の多くはレバーを食べたがらないために、その調理方法を知らないことが多い。一般に、弱火でレバーを長時間調理すると苦みが増すため、料理のコツは、レバーを高温(約200℃)の油で短時間に揚げれば苦みを封じ込めることができ、おいしく食べられる(NHK「ためしてガッテン」)。あるいは、レバーをみじん切りにし、ミンチに混ぜるのも一法である。  途上国において、このような鉄分豊富な食材を供給できない場合は、鉄鍋を用いて調理することも一つの方法として用いられている場合もある。

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